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冷間鍛造とは | 株式会社クリアテック

冷間鍛造技術の解説〜目次〜


最新の冷間鍛造技術

冷間鍛造で歯車歯面のディンプルを成形する

 

(2024年01月19 日更新)

歯車歯面にディンプル成形することにより、摩擦係数を小さくする効果が期待できる。摩擦係数を下げることができれば、EV等の減速機におけるギヤ音を小さくすことができ、これによりギヤの軽量化に大きな期待ができるものと考える。

三次元測定データ

三次元形状測定機で計測した歯面表面の様子

表面粗さ

Ra:0.5037μm / Rz:2.5965μm

当社で冷間鍛造したギヤ歯面の表面の様子とその測定データ。このようにギヤ歯面全体に1〜3μ深さのディンプルを形成すれば、油膜潤滑が成立し摩擦係数が一桁程度下がるのではないかと考える。

鍛造成形ディンプルでは負荷によって油圧力が高まり、周りの接触面に油膜ができて摩擦係数が小さくなる。

鍛造成形ディンプル

切削加工面にあるディンプルでは、切削溝より油が逃げて負荷接触面に油膜ができない。

切削加工面ディンプル

造形されたディンプルが深すぎると、負荷ひずみによって油圧力が高まらず接触面に油膜ができない。

深すぎるディンプル

歯車歯面にディンプル成形し、摩擦係数を小さくし、摩擦音であるギヤ騒音を下げる役目を果たし、ギヤの軽量化に貢献したい。


押出し鍛造ギヤの改善

 

(2023年08月10日更新)

ヘリカルギヤの押出し鍛造では、歯形金型が捩れているためにプレス押出し中の圧力が金型歯の上下で異なってしまう。このため上部の圧力が高く、下部の圧力が低いことで捩れ角形状がうねってしまう。このやむを得ない形状対策として、押出し直後に必要な量のテーパーを金型へ設定し、このテーパーでしごき成形をして形状を整えるようにした。

押出し鍛造ギヤの改善
押出し鍛造ギヤの改善2

上記の対策をした結果、ギヤ上下面が直角形状になりバリが小さくなった。トコロテン方式で鍛造する今回の押出し鍛造ギヤにおいて、テーパーしごきによる摩擦圧力が、ワークとワークの間の圧力を高める事となり、欠肉及び差込むバリを小さくすることができた。


金型寿命の改善事例

 

(2023年07月31日更新)

改善前

改善前の金型構造

一体式となっている改善前の金型は、鍛造内圧によって発生する水平応力成分によってS断面に大きなせん断ひずみをもたらして疲労破壊しやすくなっている。


改善後

改善後の金型構造

改善後の金型では、「金型@」「金型A」のように上下に分割した設計とすることで、大きなせん断ひずみを回避し、疲労破壊を防ぐことができ、大幅な金型寿命改善効果が得られた。



電子の働きと鍛造時の摩擦力との関係

 

(2022年02月25日更新)

鍛造においては成形荷重の約2/3が金型との摩擦により発生しているため、この摩擦力をコントロールする事で、 より自由な鍛造工程設計が出来るようになります。鍛造開発においてこの「摩擦力」のコントロールは最も重要なポイントです。

これまで当社で実施してきた多種多様な鍛造品開発の実績・経験により、鍛造温度(金型温度)を上げていくと、 摩擦力が下がる(成形荷重が下がる)現象を発見しました。いくつか実例を紹介します。

<実例@>
摩擦力を利用した冷間鍛造において、金型温度を80℃に昇温してヘリカルギヤを鍛造成形した場合、ヘリカルギヤを押出す荷重が常温時より−50%以上も下がった。 (ヘリカルギヤの場合は縦荷重が金型歯面を押圧しながらすべるので、材料と金型間の距離が相当に短いゆえ効果が大きかったと推測する)

<実例A>
圧入組付した金型が常温では解体出来ない事態に対して、金型全体を200℃に加熱すると荷重が−30%ぐらいに下がり、金型を解体できた。

この「鍛造温度(金型温度)を上げていくと、摩擦力が下がるという現象」は、 鍛造(金型orワーク)温度を上げていくと、二金属の双方の表面に自由電子が集まり、 この集まった自由電子の持つマイナス電荷同士の反発力(クーロン力)によって金型とワークの接触圧力が下がり、 摩擦力が下がる(成形荷重が下がる)のではないかと推測しました。

クーロン反発力
クーロン反発力方程式

※距離(r)が小さい(nmクラス:鍛造接触圧力が大きい)ほど反発力が大きいと推測

図 クーロン反発力

以上の推測を元に、その他の現象についても考察しました。

<推測@>
表面処理(TiCコーティング)を施した金型を使用して鍛造する際、成形荷重高くなるが、 これはコーティング層には自由電子が少ない為ではないかと推測する。(コーティング成分の電気抵抗値より判断)
また、電子が外へ出難いため、焼付き難いのではないかとも推測する。(焼付き:物質から電子が出る「酸化」が要因)

<推測A>
鍛造成形速度は遅い程に荷重が下がる事がある。例えば温間鍛造でも成形速度によって摩擦荷重が大きく変化し、 最大で40%以上の荷重増加を経験した。これは電子の移動速度が0.1mm/秒と言われているので、 成形速度に電子の移動が間に合わず、マイナス電荷同士の反発が小さくなるためではないかと推測する。

※電子の動く量は「リチャードソンの方程式(エジソンの電球が光る現象の解析)」、 金型とワーク間での反発力は「クーロンの方程式」でおおよそ想定できる。

以上より、
電子は鍛造における摩擦力に対して、大きな影響を与えているのではないかと考えます。


一打による内歯ヘリカルリングギヤの冷間鍛造成形

 

(2022年02月14日更新)

改善前
改善前 改善後
写真2 改善前歯部 写真3 改善後歯部

これまでのトライ成形では、押し出し中において歯厚変動が起こり、歯形精度がコントロール出来なかった 歯形押出し型の歯厚部歯面へ0.05mm程のテーパしごき代を設定する事で、歯形精度を確保出来るまでの技術ができた。

一打にて成形できることで、切削加工に対して有利性が増加したと考える。

従来の押出すだけの工法では、歯形部の圧力が小さい為に、積み重ねていくワークとワークの間の欠肉量が大きかったり、その隙間へ バリが高く立っていたが、今回の改善により平面度が良くなった。(写真2及び、写真3を参照)


冷間鍛造の基礎知識

塑性加工(そせいかこう)

物体に一定以上の力を加えると、物体は変形し、加えた力を取除いても変形は残る。 このような変形を永久変形と言い、永久変形を残すような変形は、『塑性変形(そせいへんけい)』と呼ばれる。 この塑性変形を利用して、物体を成形する加工法を『塑性加工(そせいかこう)』と呼ぶ。

鍛造(たんぞう)

金属(板状の物を除く)を、工具の使用により『塑性加工』する加工法を『鍛造』と呼ぶ。

鍛造(たんぞう)の種類

鍛造の分類方法は、『変形方法』によるものと『鍛造温度』によるものが一般的である。 クリアテックでは、鍛造温度で分類される『冷間鍛造』と『温間鍛造』の開発、金型設計製作、冷間鍛造品の製造及び関連技術指導を行なっている。

冷間鍛造

金属を塑性加工する加工方法の一つに「鍛造」がある。 中でも、常温下で「鍛造」することを「冷間鍛造」呼ぶ。 (一般的に600℃〜900℃で行なう鍛造を温間鍛造、それ以上の温度の鍛造を熱間鍛造と呼んでいる。)

冷間鍛造と熱間・温間鍛造

一般的に600℃〜900℃で行なう鍛造を温間鍛造、それ以上の温度の鍛造を熱間鍛造と呼んでいる。 冷間鍛造は常温で行なう鍛造をいう。冷間鍛造は熱間鍛造に比べて精度の高いものを生産する事が可能だが、常温で鍛造する為、ワーク(被加工物)の硬度が高く、 ワークの大きさに比して大きな成形圧力を必要とする。従って、比較的小さい物の方が適している。またワークと金型との硬度の差が小さく、 金型自体の設計が難しい上に、目的の形状を得る為に何度も鍛造を繰り返さなければならないが、目的の形状を得るのにどのような途中形状にするべきかは、 理論に裏打ちされた高度の技術と経験が必要になる。


冷間鍛造と熱間鍛造の比較

冷間鍛造と熱間鍛造の比較
項目 冷間鍛造 熱間鍛造
成形時のワーク温度 常温 高温
成形時のワーク硬さ 硬い 比較的柔らかい
成形時の圧力 大きな圧力が必要 比較的小さくて良い
鍛造後のワーク精度 精度が高いものができる 精度が低い
ワークの大きさ 比較的小さい物に適する 大きなものも可能
鍛造後のワーク表面粗さ 細かい 粗い
金型とワークの硬さの差 小さい 比較的大きい
加工の難易度 難しい 比較的やさしい
完成までの鍛造回数 多い 少ない
金型の破損原因 金属疲労による破損が多い 熱摩耗

冷間鍛造のメリット・デメリット

冷間鍛造のメリット

・最小限の材料で製造可能(削りによるロスが少ない)
・成形時の精度が高い
   ⇒1μm単位の成形ができる
   ⇒ネットシェイプ(後切削加工不要)
※但し他の金属加工と同様に温度変化を小さくする必要がある。最大要因としては摩擦係数の安定が精度を左右する。

冷間鍛造のデメリット

・複雑な形状の加工が難しい
   ⇒成形圧力が高いため
・加工硬化するため、中間焼鈍・ボンデが必要
   ⇒金型との潤滑のため、ワークのボンデ処理(リン酸亜鉛)が必要
・大きい成形圧力と摩擦力が金型に掛るため、疲労現象がはやく、金型破損がおこる。

これらがクリアできれば、部品製造の未来が開ける
・なるべく中間焼鈍・ボンデをしない工程設計
・設計力を高め金型寿命の改善


冷間鍛造金型の割れ対策

金型の破損原因のほとんどが型割れなので、型割れ対策による寿命向上が必須となる。
従来の金型は、鍛造成形時のひずみ分析が甘く、理論化出来ていなかったために、対応能力が低かった。
破損した金型をよく分析し、経験と知識を重ねる事で、ひずみへの理解が向上して、より正確な対策案が生まれるようになった。    ⇒具体的な型割れ対策の事例を紹介

型寿命対策1

冷間鍛造金型の割れ対策−事例1

  この事例では、分割構造として金型に複合応力をかけないようにしています (このとき、合わせ面でのバリ入り対策も併せて行います)。一方向のみの力になる金型を設計することで型寿命の向上ができます。


型寿命対策2

冷間鍛造金型の割れ対策−事例2

  金型が下方に反って破損する場合は、あらかじめ型を逆方向へ反りを起こしておくことで回避できます。 長年の経験とノウハウ、蓄積された理論値よりこのような金型を設計、製作することが可能となります。



クリアテックは冷間鍛造技術のエキスパートです

クリアテックは、冷間鍛造において蓄積された技術、経験を基に鍛造用金型、鍛造試作品の製作を行っています。鍛造用金型の設計、開発、製作を通してお客様のモノづくりを強力にバックアップ致します。金型寿命を延ばしたい、ネットシェイプしたい、工程を短縮したい、鍛造用ダイセットがほしい、切削加工から冷間鍛造加工にしたい、新たに冷温間鍛造事業を立ち上げたい・・・など、とにかく冷間鍛造に関してお困りでしたら、是非一度当社までご相談ください。会社見学も歓迎いたします。

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