切削せずにクラウニング付きヘリカルギアを造る
今、変速機用歯車のネットシェイプ化が求められている。
ネットシェイプとは?
冷間鍛造で成形し、そのまま使用できる製品。切り粉を出さず、歯面の仕上げの加工(研磨等による精度出し)も不要。
地球環境にやさしい!
従来の工法(ギア切削)と比較して、高い材料歩留まりを実現。鉱物資源の無駄遣いを抑制し、効率のよい生産工程設計が可能。
動力伝達性能に優れる!
冷間鍛造でネットシェイプ化された製品は、切削加工品より疲労強度が上がり、且つ、滑らかな表面性状を持っている。
穴抜き、歯形成形、クラウニング成形すべてを冷間鍛造で(ネットシェイプ化)
すべての工程を冷間鍛造で実現することで、切削レスを実現しました。これにより切粉が出ず、切削加工製品に比べ素材が約35%少なく済みます。また、これは環境性能の向上にもつながります。 また、冷間鍛造でネットシェイプ化された製品は、切削加工品より疲労強度が上がり、且つ、滑らかな表面性状を持っているため、歯面の疲労(チッピング)が起こりにくくなります。 さらにホブ盤や、ギアシェイパのような特殊機械を導入することを考えると、設備投資に関してもコスト削減が実現できます。
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ブランク材 | 第1工程 穴抜き | 第2工程 歯型状成形 | 第3工程 クラウニング成形 |
コストだけでなく、歯車の強度、歯面の表面性も向上!

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切削加工歯車 | 冷間鍛造歯車 |
塑性加工は材料のファイバーフローが切れなくなるため、靱性が高くなります。図1のように冷間鍛造では流れを断ち切ることなく加工ができます。
また、切削加工で製作した歯車はファイバーフローが切れてしまうだけではなく、歯面が滑らかになりません。しかも切削の刃物が通過した後が筋となって残ってしまいます。図2のように切削歯車(左)では左上から右下に向かう筋が確認できます。これが刃物が通過した後です。冷間鍛造歯車(右)には確認できません。
図3に示すように、切削歯車(左)はこの筋の突起同士が接触してしまうため、面圧が局所的に高くなり疲労(チッピング)に弱くなる可能性があります。一方、冷間鍛造歯車(右)は出っ張りがほとんど無く、深さ2〜5μmの微細な点状の凹部があるプラトー表面になります。歯車の実効接触面積が大きくなり、同じ動力を伝えても局部の応力は小さくなり、歯面の疲労が起こりにくくなり、この結果として強度が向上すると予想しています。

切削加工歯 冷間鍛造歯車
図3 各加工方法における歯面の接触の様子
さらに、歯底の形状を自由にできることも強度を上げることにつながると考えます。切削では、刃物の形状と軌跡が決まっているため、歯底の形状は自由に選べません。実際には歯底の形状は、応力集中を防ぐためにできるだけ曲率半径が大きい方が望ましいとされています。この点でも冷間鍛造は優位性を発揮するのです。
このような、ファイバーフロー、歯底形状の両方の問題を解決する為に、切削歯車では歯底部にショットピーニングをして圧縮応力を与え、歯底が疲労崩壊するのを防ぐ必要がありますが、この工程分のコストも抑えられることになります。